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「俺の事は飽きたんでしょ ならもうほっといて…」 「それとこれとは別だろ」 「別なんだ?」 櫂がちゃかすように笑った。 「生徒を心配して何が悪い」 「都合いいときだけ先生ぶらないでよ」 櫂が笑いながら俺の痛いところを突いてくる。 口ごもった俺を見て少し哀しそうに。 「……… 飽きたって言うのは嘘だよ。悪かった。 そう言った方が、後腐れないと思ったんだ」 「 ……… 」 「こんな事続けてたらいつかバレる お互い…いいことなんてひとつもない…」 櫂は俺から目をそらして、窓の外を凝視した。 俺の言葉なんて聞こえないと言った感じで。 「俺だってそれなりに悩んで今があるんだ だから櫂が感じてる孤独や不安は、少しくらい 理解できる。心配して当然だろ?」 静かに櫂が俺の目を見た。 レモンティーみたいな色の瞳が、いつもより 多く水分をたたえて。 「むちゃするなよ。 話しだったら いつだって聞くから」 櫂は眉を寄せて笑って、首を振った。 「そんなのいらない」 「櫂…」 「俺が今欲しいのは、肌を擦り合わせて一緒に 朝まで寝てくれる人なんだ。 当たり障りのない事しか言わない、真面目な 高校教師なんていらない」 「………櫂」 強い口調で言われて、何も言えなくなった。 櫂はそのまま、また窓の外に視線を固定した。 言葉が見つからない。 何を言っても“当たり障りのない事しか言わない 高校教師” になってしまう。 櫂にこんな激しい1面があるなんてビックリだ。 ちょっと進みたいだと思った。 中性的な柔らかな見た目と穏やかな物腰から 想像もできない、熱い感情を内に秘めてた。 このままどこか、誰も知らない所へ連れ去れたら 簡単なのに。 面倒なルールは全部忘れて…。 でも俺は知ってる。 櫂が今俺に抱いてる感情は 恋とか愛じゃない。 本人も気づいてるか分からないけど…。 だからこのまま突き進んだとして 大怪我をするのはきっと、俺だけなんだ。

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