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10. 7
「明日、朝になったら積もってるのかなぁ…」
「……ん?」
俺の腕の中で、櫂がつぶやく。
俺はもう夢うつつで、櫂の声がずっと遠くに
漂うように聞こえた。
「制服…念のため持ってきて良かった」
「…うん、、そうだな」
「ね、カーテン閉まってるのに、外がなんだか
明るく見えない?雪のせいかな?」
「……ん、、、」
腕の中でゴソゴソ櫂が動いて、唇がふれ合う
感触がした。
「フフ……ゴメンね。眠かったね」
「……寝てないよ」
「ハイハイ。おやすみ」
俺がまともに返事をしなくても櫂の機嫌は
変わらない。
言葉ひとつひとつが柔らかくて、
機嫌の良さが伝わってくる。
お互いの腿を擦り合わせてホッと息を吐き
俺の手のひらや顔のラインを、感触を確認でも
するように指先でゆっくりなぞる。
新しいおもちゃを手に入れたばかりの
子供みたいだ。
瞼や唇、耳朶までゆっくり…。
触れることで知ろうとするみたいに。
俺はそれを好きにさせたまま、目を閉じてた。
激しく愛し合ったあとにやってくる、後悔や
焦燥感に気づかないフリをして。
「ずっとこうしてたい…」
聞こえるか聞こえないかくらいの
小さな声で櫂がつぶやいてた…。
俺は何故か胸の奥がチクチク痛んで苦しくて、
櫂の言葉は聞こえなかった事にした。
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