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11. 5
櫂はその日ずいぶん遅刻して登校した。
午前中最後の授業前にLL室に鍵を渡しに来たので
今来たの?と聞くと無表情にうなずく。
「あれから ちょっと寝てた…」
それだけ言って、さっさと席につき、机の上に
突っ伏した。
ー まだ怒ってる…
俺は何か声をかけようかと迷ったけど、
すぐに他の生徒も来るだろうと思い
何も言わずに、俺は授業の準備をした。
思った通りそれからすぐに他の生徒達も教室に
集まり始め、あっという間に教室はガヤガヤと
うるさくなった。
休み時間も、授業中も、会話どころか
目もほとんど合わなかったけれど
今何を言っても無駄だな、と思い
機嫌をとるのも面倒で、下校まで放置した。
家に帰って部屋の様子を見ても、いつもの
自分の部屋だった。
寝室を見ても特に変わった様子は見られず
櫂が寝たとは思えなかった。
ー あいつ…ソファーで寝たのか?
ちょっと気にはなったけれど、ちょうど進から
電話がかかってきた事でそんな事はすぐに忘れた。
(仕事お疲れさま)
「おう。そっちもな」
(俺は在宅だったし…だいぶ寝たよ。
もう徹夜は無理だわ、昔は夜通し乱交パーティー
しても、翌日普通に仕事できたのに…)
「あら、お下品」
(そうちゃんだって、やってたでしょ)
「どうだったかな~ まぁ夜通し遊んでも
元気だったのは確かだな…」
(……お互い若くないし…もう、ムチャはやめよぅ)
「そうだな」
(でも何かあったらいつでも連絡ちょうだい
真夜中だって飛んでくから)
「何だよそれ」
進が軽い感じで言うから、一緒に笑った。
(辛いこととかあったら、俺のとこで弱音吐いて
俺もそうするから!)
「…… そうだな…頼りにしてるよ」
(あ、ひっかかった、俺の作戦。
飴で釣って結局離れられなくする作戦)
笑いながらそんな事を言う。
「心の声が漏れてるぞ」
(あれ?漏れてた?フフ…)
正直、進の言葉にずいぶん気が楽になった。
進は 自分が何人かの1人でもいいと、暗に
俺を許してくれたのだ。
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