櫂は無邪気で可愛い。 やきもちやきで、俺が他の生徒と勉強以外の事で 楽しそうにしていると、すぐに機嫌が悪くなる。 最初は面倒に思っていたけれど、今では面倒だと すら思わなくなった。 ああ、またか、と思うだけで、機嫌をとろうとも 思わない。 今では怒ってむくれている姿も可愛いと思える。 櫂はやきもちを妬いて機嫌の悪い時に 時々、間宮や同級生とイチャつくようになった。 普段はそんな事をしないのに、明らかに俺への あてつけだ。 無意味にじゃれあってみたり、膝の上に座ったり 異常に距離が近くなる。 ノーマルな相手からしたら、距離が近いな… くらいにしか思わないだろう。 そういう意味では俺は何も心配してなかった。 俺が気になっていたのは櫂が変わってきた事だ。 以前は、ゲイである自分を隠そうとしてか 学校では人と、微妙に距離を置いている感じが あったのに、最近はむしろ自分からちょっかいを 出して相手の反応を見るようになった。 イケる相手か？ どう足掻いても無理な相手か？ 探る余裕が出てきたのだ。 今はただの 当てつけだけど、いつか俺に飽きた 時には、こうして他の男を探すのだろうと思うと 少し櫂が怖くなる。 櫂はこの半年程で顔つきも変わった気がする。 うつ向きがちで、控えめで目立たないタイプの 生徒だったのに、今では、数少ない女子も秘かに 櫂を目で追って、かっこよくなったよね、などと 噂している。 俺から言わせるとかっこよくなった訳じゃない。 見た目の美しさは以前から変わらない。 色気が出てきただけだ。 以前は隠れていた色気が駄々漏れになっただけ。 そんな櫂を苦々しく見つめていると 俺に気づいた櫂は、いつも満足そうに笑い それから何事もなかったように また俺の腕の中に戻ってくるんだ。