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「またサボってる…」
LL室のドアを開けると笑いながら
櫂が勝手に入ってくる。
「サボってない。空き時間に休憩してるだけ」
俺は欠伸をしながら鍵を閉めた。
「サボってるのそっちだろ
見つかる前に教室戻れよ……」
「やったら帰る」
「やらん」
「えーやろうよ~ 学校って興奮するじゃん」
「昨日いっぱいやったろ」
「……つまんないの」
教師用の席に座る俺の上に股がって、キュッと
抱きついて甘えてくる。
しばらく無言のまま抱き合っていると
櫂も ふわぁ~、と欠伸をした。
「蒼佑とくっついてると 眠くなる……」
「赤ちゃんか。
いい子だから教室戻りなさい」
「……今日も蒼佑の家行っていい?」
「連泊ダメ」
「今日はちゃんと帰るから…」
「だーめ。たまには家でお父さんと会話しなさい」
「……先生みたいなこと言っちゃって」
「先生だもん」
頭をポンポン叩くと、櫂がチュッとキスをして
立ち上がった。
「じゃぁ、いい子に教室戻りま~す」
ドアの前で振り返って微笑む。
「おう」
「……ね、蒼佑、明日どっか行かない?」
「どっか…?」
「買い物…とか? どっか遠く…」
「………そうだな…考えとく」
「ホント?」
「ん、だから今日は早く寝ろよ」
「うん」
嬉しそうに笑って機嫌良く出ていく背中を
見えなくなるまで見送った。
俺たちは外出したことがない。
どこで誰が見てるか分からないし
せめて櫂が卒業するまで、目立つ行動は
したくないというのが本音だった。
でもさすがに土竜のような付き合いに
飽きてきたんだろう。
外食だってほとんどしてない。
かわいそうだと思って
ついあんな返事してしまった。
車で遠出なら、学校の同僚や生徒に見られる
可能性も少ないだろう。
不健全な行為ばかりでは、俺も罪悪感で
気が重かった。
俺はゆっくり席に戻ると、机の上に置いていた
携帯を手にとって明日の天気を調べた。
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