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13. 3

その夜櫂から電話があり、1時間近くダラダラ話した。 今週末は天気が悪いから、出かけるのは 別の日にしようと話し、明日がいいと言って むくれる櫂をなだめ 行こうと思っている観光地の話をして 機嫌が良くなったところで電話を切った。 それから30分もたたずインターフォンが鳴った。 ー まさか櫂? 家にいたと思っていたけど、実は外だったのか? そう思いながらインターフォンの画面を見た。 画面の向こうにいたのは進だった。 (こんな時間にゴメン…) 「…いいけど…どうした…?」 言いながらマンションのエントランスの オートロックを開けた。 明らかに様子がおかしかった…。 うつ向きがちで…インターフォンの荒い画質では 表情も良く分からなかったけど 笑顔もなく声も低い。 進はゴメン、と もう一度呟いて 中に入ってきた。 なんだか心配になり、思わず玄関を出て 進がエレベーターで上がってくるのを待ってしまう。 もう3月になるというのに、夜はまだまだ冷える。 やがて部屋の前に現れた進を見て絶句した。 一言で言うならボロボロだったのだ。 口の端は切れてるし頬も腫れて、目の横も アザができて、髪もボサボサだった。 そんな状態で俺を見つけて、眉を少し寄せると 決まり悪そうに笑った。 「……ヤラレタ」 俺はヨロヨロ歩く進の肩を支えて、家に戻った。 「…パーティー行ったんだ…誰かイイ人に 出会えるかもって思って…最後のつもりで…」 俺が風呂で身体をキレイにしてやっている間 進は1人で淡々と話し続けた。 「顔見知りなんてホントにちょっとでさ さらにガラ悪くなってて…気が合いそうな人も いなさそうだったから、軽く飲んで帰ろうと 思ってたら、アイツに会っちゃって…」 「この前のヤバそうなアイツ?」 「うん… 今日は奢らせてって言うから 一杯付き合って帰ろうと思ったんだ そしたら急に酒が回ってグラグラして… たぶん…何か薬入れられたんだ」

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