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傷だらけで、小さくなって目を閉じる進が
眠るまでそっと頭を撫でていた。
櫂だったら…こんな目に彼があったら…
俺は何を思うだろう。
いくら自分にも非があるとはいえ
これは暴力だ。
本当は死ぬほど悔しかったに違いない。
一緒にいたら守ってやれた。
それができなかった事は俺も悔しいけれど
報復してやろう、とか、迂闊な行動をした
進を責める気持ちは、これっぽっちも湧いてこない。
ー 櫂だったら…
考えただけで胃がキリキリと痛んだ。
きっとめちゃくちゃ怒ってしまう……。
言っても仕方がないと分かっていても
どうしてあんな所に行ったんだ、と…。
手を出した奴を許さない、とも思うだろう。
こんな事がなければ気づかなかった。
進と櫂、どちらも同じように愛しいと思っていたけど
いつの間にか…こんなにも違っていた…。
「キスしてよ…そうちゃん…」
目を閉じたまま、進が寝言みたいに呟いた。
俺は少し考えて進のおでこにキスをした。
ゆっくり顔を上げて何か言いたそうに俺を見る。
でも結局何も言わず、モゾモゾと手を伸ばして
俺の胸に顔を埋めて、進は静かに眠りについた。
・
・
意識の遠い所で物音を聞いた。
何の音か考えられず、ただボンヤリ瞼をあげて
となりで寝息をたてる進を見た。
バタンと、また物音がして、今度はしっかりと
目が開いた。
ー 今の音…玄関のドア?
まさかな…鍵は閉めて寝たし…。
気のせいか…。じゃぁ何の音だろう?
俺の肩を枕にして眠る進を、起こさないように
そっと体をずらして時計を見た。
朝8時を回った頃だった。
カーテンをしているとはいえ、部屋の中は
朝が来たとは思えない暗さで、雨でも降って
いるのだろうか?と、なんとなくカーテンの方に
目を向けた。
「……何時?」
進が半分眠ったまま聞いてくる。
「8時過ぎ…。まだ寝てていいよ」
進の髪を鋤くように撫でた。
その時
部屋の引戸がガラッと音をたてて開いた。
飛び上がりそうなほど驚いて
逆に声も出なかった。
そこには人形のように固まった櫂が立っていた。
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