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14. 電 火 ※
月曜は朝からどしゃ降りの雨だった。
校内もジメッとして薄暗く、雨の日独特の匂いに
包まれていた。
櫂は朝礼にも普通に出ていた。
相変わらず無視を決め込んで、俺とは目も合わせず。
俺はご機嫌とりをあきらめて、櫂が俺の話を聞く気に
なるまで待とうという気持ちになっていた。
櫂のクラスに授業に行くときも
きっとまた無視されるのだろうと少し気が重く
顔に出てしまいそうな自分を奮い立たせ
櫂の教室に入った。
だが、櫂は居なかった。
クラスの生徒に聞いても知らないと言う。
ー アイツ……露骨にサボりやがって
俺はとりあえず授業を初めて、少し時間が経った
ところで、課題を与えて自習にして櫂を探しに
出る事にした。
トイレや保健室…思いつく場所を手当たり次第。
進路が決まっている3年は、もう自由登校になって
いるため、ほとんどの生徒は出席していない。
そのせいか、天気のせいか…授業中の校内は
どことなく普段よりシンと静まりかえっている。
俺は最後にLL室に向かった。
他の場所に居なかった事で、ある程度確信をもって。
この時間は使われていないはずだ。
櫂はきっとそこで俺を待ってる。
LL室後方のドアは壊れていて、時々鍵がうまく
閉まらず、少し扉を揺すると開いてしまう事を
俺たちは知っていた。
ドアの前で俺は少し笑った。
ー 結局、仲直りがしたいんだな…
ほんの少し隙間の開いたドアに、そっと手をかけた。
「………にった…」
「………!?」
部屋の中から聞こえてきた微かな声に
体が固まる。
「………っ…んっ…」
ドクドク心臓が鳴り出して目眩がした。
部屋に居たのは櫂だけじゃない。
隙間から中を覗くと、机の上に座って
顔を寄せ合う櫂と間宮が見えた。
思いもよらない状況に、ドアにかけた手が
震えだす。
このまま立ち去ろうか、教師の顔で割って入ろうか
逡巡して、考えがまとまる前に
勝手に体が動き、俺は勢いよくその扉を開けた。
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