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稲光がひっきりなしにカーテンを照らして その瞬間だけ、ベッドに転がった櫂の輪郭が くっきり浮かび上がる。 「起きろよ。 送る」 服を着ながらそう言うと 無言のまま、のろのろと櫂は服を直した。 1人でキッチンへ行きペットボトルのお茶を 飲もうとキャップを回し、力を入れた時 自分の手が震えていることに気づく。 力が入らずキャップを開けるのに苦労していると 静かに櫂が部屋から出てきて、俺を見ることなく 玄関へ向かった。 「おい、送るよ」 櫂は止まらなかった。 玄関で腕を掴んでひき止めると、弱い力で振り払う。 「……1人で帰りたいんで…」 そう言って1人で玄関を出て行く。 俺はそれを追うことができなかった。 閉まるドアがスローモーションのように見えて 櫂の顔すら見えないまま…。 何も考える事ができず、呆然とリビングに 戻って、ソファーに崩れ落ちるように座った テーブルの上に置かれたままの鍵が目に入り 空っぽの心のまましばらくそれを見つめた。 櫂が置いていった合カギ。 それを見ていたら訳も分からず ボロボロと涙が溢れてきた。 これで終わりだ。 櫂がここに来ることはもうないだろう。 涙は止まらず、そんな自分が滑稽で 同時に笑いが込み上げてきた。 「何やってんだか…」 全てがどうでもよくなって 携帯を手にとって、櫂のあの動画を削除した。 そして櫂にメッセージを送った。 (動画は消した。お前は自由だ)

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