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16. 街も僕たちも…
俺の緊張をよそに
蒼佑からの連絡はなかった。
1週間経っても
2週間経っても。
最初の数日は毎日、どうだった?と
ワクワク顔で俺に確認してきたルミも
最近は蒼佑の件を忘れたように、何も
聞いて来なくなった。
ルミの言ったことを 冗談だと思ったのかも…。
電話番号を受け取って、すぐに無くしたとか
捨てたとか…。
その可能性も十分にあると思った。
でも俺は自分の中で、ひとつの答えを
勝手に見つけていた。
ー 蒼佑は俺の番号を残していたんだ
そしてルミが渡した番号が俺の番号だと
気づいた…
だから かけてこないんだ
それが答えなんだ。
もう一度会う気はない、話す気もない。
そう俺に分からせたいんだ。
そんな風に勝手に理由を見つけて落ち込みながらも
どこかで、そりゃそうか、と納得している自分も
いた。
どこか新しい環境で、平穏に暮らしているのなら
過去の古傷を自ら抉るような事したくないだろう。
謝りたいなんて 俺のただのエゴだ。
そう思って諦めかけていた深夜…。
バイトから帰ろうと、駅へ向かう俺のバックの中で
携帯が鳴った。
バックから携帯を出して、画面を見て
思わず立ち止まった。
知らない携帯番号からの着信だった。
ゴクリと息を飲んだ。
ー まさか…
歩道の脇に寄って、自分を落ち着けるために
フーっと息を吐いてから出た。
「…はい」
(……櫂?)
懐かしい声だった。
ずっと聞きたかった。
名前を呼ばれただけで、胸がいっぱいになって
パンパンに息を吹き込まれた風船みたいに
破裂しそうになった。
「………うん」
それだけ返すのが精一杯だった。
それなりに人通りのある通りで
男のくせに、一人で女々しく泣いてしまいそうで。
(やっぱりか…)
その声は優しくて、蒼佑が微笑んだような
気すらしてくる…そんな声だった。
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