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「櫂!こっち」 呼ばれた方に目をやると、蒼佑が半個室になっている テーブル席から顔を出して、軽く手をあげてた。 俺は店の入口で案内をしてくれた店員にお礼を言って 蒼佑の座るテーブル席に入った。 「ゴメン、結構待った?」 「いや、来たばっかりだよ」 「電車一本行っちゃって…」 とりとめのない会話で、自分を落ち着けた。 蒼介はそっか、と笑いながら、メニューを 俺に渡してくる。 「…櫂とこんな風に堂々と酒を飲む日が 来るとはねぇ」 「……うん…変な感じだね…」 蒼佑から電話をもらった日 俺は勇気を出して もう一度だけ会って話したいと お願いしたのだ。 だって 電話で謝って終わりなんて… そもそも心の準備もできていないタイミングで 蒼佑からの連絡だったから 全然言いたいこともまとまってなかった。 蒼佑は俺のお願いを、あっさりと聞いてくれ 日程と時間、場所、を決め…今に至る……。 「じゃ、乾杯」 「乾杯!」 2人でビールで乾杯だ。 飲みながらチラチラ蓮を見つめる。 会わなくなって3年? 蒼佑の見た目はほとんど変わってなかった。 相変わらずの童顔。でもちょっと太ったかな? 元気そうで顔色も良かった。 蒼佑はタブレットのメニューを見て、 俺とちゃんと目を合わせない。 「先生…今は何してるの?」 「塾の講師」 「……へぇ」 「櫂は?大学?」 「……うん」 どうして高校辞めちゃったの? 俺のせい? 恋人はいるの? ……まだ、怒ってる? 話したいことの どれもがサクッと口にできる 内容ではなくて、会話を続けられない…。 「…あれさ…あの、、電話番号…。 あれはルミが勝手にやったんだよ 勝手に番号渡したって聞いて、ビックリして…」 「おお、俺もビックリした 番号見たら、なんか覚えがある番号だなって」 「覚えてたの?」 「ああ。携帯の登録は消してたけど 櫂の番号末尾が88だっただろ?だから 覚えてたんだ」 消されてた事にショックを受けつつ 覚えててくれた事が嬉しい…。 何だろ これ。

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