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「…あの子、彼女?」
「え!?ルミ?まさかっ!」
「なんだ違うのか。
ワザワザ俺に櫂の番号渡してくるなんて
それなりにお前の事情知ってるんだろうなって
知ってるって事は、それなりに深い仲なのかな
って思ったんだ」
ー するどいな…
「…ルミからは告白されて、付き合えない理由が
あやふやじゃ納得してもらえないって思って
俺の事……ちょっと話したんだ」
「……女の子は…やっぱりダメだった?」
「………うん…」
俺が少しうつ向くと、やっと蓮が俺の目を
真っ直ぐ見て、そっか、と小さく相づちをうった。
「先生…は…今は?
……結婚…とか?恋人…は?」
「今はいない」
「そ…」
それを聞けてホッとした。
今特別な人がいないというだけで
少し勇気がもらえた気がしてしまう。
「ひどい事して悪かった」
「え?」
唐突に蒼佑がきりだしてきて
緩んだ緊張が戻る。
「最後の暴力は、もちろんだけどさ
それだけじゃなく…高校生のお前にしたこと
全部さ…申し訳なかったって…後悔してたんだ
大人で、仮にも教師だったのに
どうかしてたよ……傷つけてゴメン」
蒼佑が頭を下げた。
ー え ……? 後悔?
「…ひとこと謝りたかった
会えて良かった」
顔を上げた蒼佑が柔らかく笑って俺を見た。
何故か胸がギュッと握られたように痛む。
「やめてよ。謝りたかったのはこっちだよ
俺…子供で…今思うと自分が怖いよ。
鍵 勝手に作ったり、先輩使ってあんな……」
「もういいって、それも全部俺のせいだよ
俺が櫂をそんな風にしたんだ。
お前はまだ子供だったんだから気にすることない」
蒼佑は笑ってホルモン焼を皿にとりわけた。
俺は全然笑えない。
「後悔って……俺とヤったこと全部?」
「……まぁ、そういうこと」
「俺は…違う…よ
うまく言えないけど…」
「櫂、もう忘れていいよ」
「……え?」
「俺が突然学校辞めたりしたから
自分のせいだ、とか思ってただろ?
そんな事ないから
それも気になってたんだ
櫂のせいじゃない。そう伝えたくて来た」
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