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「……そんな全部持ってっちゃうなんてズルい 俺だって…そりゃ子供だったけど… 全部先生のせいだなんて思えるわけないじゃん」 「そうか、ゴメンゴメン」 「また…子供扱い」 「そんな事ないって! 俺はただ櫂がつまんない過去に囚われて 今を無駄にしてほしくないだけだよ せっかく再会したんだ。 お互いこれでちゃんと終わりにしよう」 蒼佑はずっと営業スマイルをくずさない。 言いたいことを言ってスッキリしたとでも いうようにサラダなんて食べてる。 「……嫌だ」 「ん?」 「忘れない。 俺は確かに先生に謝りたかったし 自分のバカな行動は反省してる、後悔もしてる でも…俺は先生を忘れたかったわけじゃないよ 先生との過去をつまんない消したい過去だとも 思ってない」 「………」 「……先生は消したかった?」 勢いで聞いてしまって後悔した。 安定した生活をぶち壊すきっかけになった できごとなんて、消したいに決まってる。 「……どうだろな」 蒼佑は伏し目がちに笑って言った。 俺はそれが蒼佑のウソだと思った。 俺を傷つけない為の優しいウソ…。 俺はビールジョッキを握りしめて残りを一気に 飲み干した。 「おかわり!!」 「…え!?」 「先生もカラじゃん!ビールでいい?」 俺は蒼佑の返事も待たずビールをオーダーした。 それから俺はドンドン飲みまくった。 蒼佑の飲み物も、頼まれてもいないのに なくなる頃には次の飲み物が運ばれてくるように。 最初は笑って許してくれていた蒼佑も 最終的には俺からオーダー用のタブレットを 取り上げた。 俺たちは その間、芸人のゴシップや、 同僚の話し、大学の話し…どうでもいい事を 話し続けた。 どうでもいい、なんて思ってたのは俺だけかな…。 俺はさっさと つぶれたかった。 酔いつぶれた事を口実に蒼佑に触れたかった。 もう一度だけ 最後になってもいいから もう一度その手で触れてほしかった。

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