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「大丈夫かよ… 家、まだ実家?」 「うん、実家」 店から出て、とりあえず2人で駅に向かって フラフラ歩き出す。 「…先生んちで休みたい。連れてって」 「バカ。俺んち遠いよ。 櫂んちの方が近い」 「え~~~。俺んち今日は親父いるし…」 「……お前 何言ってんの、バカ」 蒼佑が俺の言いたい事を察して笑う。 酒の勢いを借りて、腕を絡ませたら バチっと音をたてて眉間を指で弾かれた。 「っいった!痛いよ!」 「ははは、ゴメン思ったよりキレイに入っちゃった」 おでこを両手で押さえて立ち止まった俺を見て 蒼佑がカラカラ笑った。 その顔は昔の蒼佑みたいで その瞬間は俺たちの間にあった色んな めんどくさい事もなくなったみたいで 勝手に目の奥が熱くなった。 「……?オイ? ごめんって そんなに痛かった…?」 蒼佑が近づいて俺の顔を覗きこむ。 「ゆるさない…」 「そんなに?」 「ホテル連れてって」 「………」 今度は俺が蒼佑の表情を覗きこむ。 「おまえな…ちょっと落ち着け…」 「一回だけ。それでいいから。 それが最後でいいから」 「… ダメ。ほら、帰ろ」 蒼佑が俺の背中をそっと押す。 「何でダメなの?」 「………何でだろ…」 「俺のした事怒ってる? ……要らないって…あの時そう言ったよね? お前なんて要らないって…」 「櫂! あれは勢いで言っただけだよ。 俺も子供だったんだ。 あんな事言って悪かったって思ってる…」 「…じゃぁ…お願い…! あの言葉がずっと耳に残って離れないんだ 汚い物でも見るみたいに…」 「……櫂…」 「…本当に最後でいいよ 最後があんなだったから忘れられないんだ ちゃんと抱いてくれたら忘れるから…!」 もう一度、恐る恐る蒼佑の手首を掴む。 今度は振り払われなかった。 「 …… なんも持ってないよ ゴムだって、ローションだって」 「 へいき 」 俺は大きくうなずいて、蒼佑を掴まえた手に 力をこめた。 通りを歩く人が時々俺たちをチラチラ見てた。 物珍しい…面白い物を見たように。 それでも俺は握った蒼佑の手首を離せなかった。

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