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「……俺ずっと後悔してて… ずっと蒼佑に会いたくて…忘れられなかった」 「うん……」 「会えて良かった。……今、幸せ」 蒼佑の背中に回した腕にキュッと力をこめた。 「大げさだな」 蒼佑が笑いながら、優しく俺の後頭部を 撫でてくれた。 「……また、連絡していい?」 「………」 蒼佑は無言のまま俺の後頭部をなで続ける。 「……1回でいいって、言ってただろ? そしたら忘れるからって…」 「……深い意味なんてなくていいよ ただ普通に…飲んだり、先生と生徒の時には できなかったことを…さ?」 やってみたいんだ、と、蒼佑の顔を見た。 「無理だよ」 思った以上にキッパリ断られてしまった。 蒼佑は俺を抱くのをやめて、仰向けになると 天井を真顔で見つめる。 「会ってたら忘れられないだろ?」 「……どうしてそんなに忘れたいの?」 「櫂は俺の事なんて忘れて、新しい恋愛をして ほしいんだ。 俺は弱いから…会ってたら、きっとまた今日 みたいにお前に手を出しちゃうよ」 蒼佑が張りつめた空気を和ませようとするように 笑った。 「……だから、どうして? 答えになってないじゃん」 蒼佑を困らせたり、面倒くさいと思われたくないのに 高校の時と何も変わってない。 拗ねた子供みたいに、どうにか自分の我儘を 通そうと必死だった。 「……遊びだから………」 「……え?」 「俺の事好きになられても応えられないよ。 俺は昔と一緒で、おまえの事が特別な訳じゃない 櫂は何人かのセフレの中の一人でしかないんだ」 ……手足が冷たい。 頭の中がグチャグチャで… 何にも考えられない。 怒りも悲しみもない。 ただ何も考えられないだけ。 「俺、最低だろ? だから、もう会わない方がいいよ」

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