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(ちょっと話そうか… 向かえに行くよ。今どの辺?) 急な展開におどろいて涙が止まった。 ー え、今日? これから? 嬉しい! でも 急すぎて頭が回らない。 どうして? ずっと放置してたくせに…。 もう12時をまわってる。 こんな時間から会おうなんて、以前の蒼佑は 絶対に言わなかった。 俺が押し掛ける事はあっても……。 あれこれ不安は感じつつも、結局俺は 会える嬉しさには勝てなかった。 それから30分後、蒼佑は車で俺をむかえに来た。 以前乗っていたのとは違う、ボックス型の軽で。 「お疲れ」 助手席に乗り込むと、さらりと蒼佑が そう言った。 まるで、もう何年も付き合ってるカップルみたいな 自然な言い方にキュンとしてしまう。 「う、うん。 … こんな時間に大丈夫だったの?」 「職場の近くのファミレスで資料作ってて… 帰ると寝ちゃいそうだったからさ 櫂のメッセージちょうどファミレスで気づいて 見て、タイムリーだなって…」 「ああ…」 あの時思いつきでファミレスのメッセージを 送って良かった。 「実家だったよな?」 「…えっ?」 「送るよ。車で話そう」 どこか店に入ると思ってた。 でもこんな時間だもんな…。店も限られる。 ラブホ…とかね。 ひょっとしたらヤりたいのかな…? なんて思ってた。 それで呼び出されただけだったりして…なんて。 それでも良かったけど…。 「送るだけ?…すぐ着いちゃうじゃん…」 「でも外で話すのは人目が気になるだろ?」 人目を気にするような話をするつもりなんだと ちょっと怖くなる。 「じゃぁさ、家に来てよ! 今日親父居ないんだ。 先生と生徒だった時は何度誘っても エレベーターにすら乗らなかったよね?」 「生徒の家に上がり込んで、万が一やらかしたり したら…俺の中で越えられない1線だったんだ。 今思えば、他でやってるんだから同じなんだけど」 蒼佑が可笑しそうに笑いながら、ハンドルをきる。 今思えば…今だから言える…。 そんな話がいっぱいある。お互いに…きっと。

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