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「もう生徒じゃないし…いいでしょ… 車じゃ全然ゆっくり話せない」 「……うーん」 蒼佑が困ったように笑う横顔を、じっと見つめた。 昔から運転してる蒼佑を見るのが好きだった。 全然こっちを見てくれないけど、その分俺は 蒼佑をガン見できる。 かわいい横顔。 噛みつきたくなるふっくらした唇。 「誘うなよ…」 「え!?」 「家行ってもベッドに誘わないって 約束できる?」 ー ビックリした…今既にエロいこと考えてるのが バレたのかと思った 「誘ったら、のっちゃうの? 蒼佑…」 「そういうこと言うなら やっぱ行かない」 「ウソウソ!さそわない! だからウチ来てよ!ゆっくり話したいんだ」 ー ちょっと自信ないんだけどね… 「そうだよ!イチャイチャ無しで、ちゃんと 話したいんだ…この前言えなかったこと…」 「……どんなこと…? 俺が嬉しい事?悲しいこと?」 俺の言葉に蒼佑は答えなかった。 口の端だけ上げて笑って、どうだろ、と、言うように 首を傾げただけだった。 蒼佑がウチに来る…。 頑なに拒んでた蒼佑が…。 駐車場に車を止めても、気が変わることはなく 素直に俺の後を着いてエントランスに入る。 ああ、今日親父が、たまたま いない日で本当に 良かった。 ゆっくり2人で居られる。 イチャイチャ無しだけど…。 「キレイにしてるな~」 リビングに入ると部屋を見回しながら 蒼佑がつぶやく。 「そう?男所帯だから細々したとこは 全然だよ ああ、蒼佑んちはいつ行っても安定の荒っぷり だもんね」 「俺も最近は意外とちゃんとしてるよ 見たらビックリするぞ」 「へぇ…」 見たいな。いつか見せてくれるのかな。 「ラテでいい?インスタントだけど」 「おう」 本当は自分の部屋に誘いたいけど 警戒されそうだな…。 二人でリビングのソファーに並んで座った。 微妙な距離をとりながら…。 黙って二人でマグカップを抱えてコーヒーを飲む。 「あ、テレビ……見る…?」 間が持たなくて聞いてみた。 「イヤ…いいよ」 蒼佑はそれほど緊張して見えない。 少し笑って、カップをテーブルに置いた。 「ファミレス無くなっちゃって残念だな 今は1人の時どうしてるの?」

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