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「…今は もう、無理に外へ出ようと思わないよ 夜はバイトも多いし…それほど困ったりも してないんだ」 「そっか、そうだよな」 「困ったり、不自由だったりっていうより …ただ、無くなったのが淋しいんだ…。 思い出がいっぱいあったから…」 「………」 蒼佑の沈黙が痛い。 何を言おうとしてるかは分からなかったけど きっといいことじゃない。 それは今日顔を見たときから感じていた。 「何度もメッセージ送っちゃってごめんね」 俺が明るい調子で言うと、蒼佑が笑った。 「櫂、めげないよな」 「これでも結構めげてるんですけど」 「……そうだよな…ゴメン」 「あやまるならチューして」 ー あ、勢いで言っちゃった 「バカ」 ー あ、さらっと流されちゃった 「櫂はさ…別に俺の事好きなわけじゃないと思うよ」 「………は?」 思わず真顔で固まった。 「高校生の時からずっとさ お前はセックスに依存してるだけで 俺の事が好きなわけじゃない 若い時は勘違いしがちだよな? 体の関係イコール恋愛だって」 ー 何言ってんのコイツ……… 「俺はずっと気づいてたよ。 それを利用して櫂と寝てたんだ。 俺のこと好きだと思って、自分から進んで 俺と寝てるって思いこんでれば、学校や親に 告げ口したりしないだろ」 ー 体が震えそう… 「言っただろ? 櫂はセフレの1人だったって さすがに生徒に手を出したのは初めてだったから 俺もバレないように必死だった。 でもお前、どんどん扱いにくくなって…そろそろ 潮時だなって思ってたよ」 「…じゃあ…何であんなに怒ったの? 遊びだったら…俺と先輩が何しようと ほっといたら良かったのにっ」 「あれは…プライドが傷ついたんだよ 従順だと思ってたペットが、自分以外の雄に 尻尾 振って…腹が立ったんだ…それで… 待て、が出来ないようなペットは要らないって… つい、大人げなく……」 「もういいよ!」 俺は大声で叫んだ。 頭がクラクラして倒れそうだった。

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