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20. 2
「お疲れ!」
ロッカールームの外でルミが待ってた。
「お疲れ…」
「飲みに行く?」
「うーん。。食欲ないしな…」
「あっそ。じゃぁ……ラブホ行く?」
店のドアが背後で閉まると同時に
ルミが言った。
「………は?」
驚いた俺は立ち止まった。
「やだ?カラオケとかもあって楽しいよ」
「え…うん?カラオケしにいくの?ラブホに?」
「櫂バカなの?ラブホはエッチしに行くんでしょ?
カラオケはおまけじゃん」
「……え?俺と?ルミが?」
ルミは大きく首を振って頷いた。
「うんうん」
「……… あの、俺 …… 女子は…」
「分かってるって!
無理だったらそれでもいいからさ
今日は朝まで一緒にいようよ!
誰かと一緒に寝たいときってあるじゃん
櫂付き合ってよ!」
ほい、と手を出して、俺がその手をとるのを待つ。
俺は何も考えられず、ただルミの無邪気な笑顔に
のまれて、その手を握った。
「よし!行こ 行こっ」
俺たちは付き合い始めたばかりの恋人みたいに
見えただろう。
恋人繋ぎで繋いだ ルミの手は、小さくて
すべすべで、そこから優しさが流れ込んで
俺の傷んだ部分を癒してくれるみたいだった。
ルミがどこまでもあっけらかんとしてるから
これからしようとしてる事も、まるで現実感が
無くて、不思議な感覚だった。
コンビニでアルコールや、お菓子なんかを適当に
買って、本当にカラオケでも行くみたいに
俺たちは裏通りの片隅にあるホテルに入った。
「今日も暑かったね~
シャワー先に浴びる?」
ルミが時計やネックレス、ピアスまで、
身に付けていたアクセサリーをジャラジャラ
外しながら聞いてくる。
「あぁ……えっと、、じゃぁ先にいい?」
「うん、いってらっしゃい!」
ルミは俺の背中を強目に叩いてシャワーへ押した。
今更ながら、こんなことしていいんだろうか?
なんて…体を流しながら、鏡の中の自分に
問いかけてしまう。
自分のことばかり考えてたけど…ルミの気持ちは?
ルミは俺を元気付けたくて、こんなこと言い出したに
決まってる。
その気持ちに甘えて、なんて事をしようとしてるんだ
俺ができても、できなくてもルミに申し訳ない!
ー やっぱりやめようって言わなきゃ!
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