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21. 2
蒼佑に別れを告げられて1月ほどたっただろうか?
季節は秋になろうとしていて、日中はまだ
焼けつくような陽射しが肌に痛いのに、
夜は早くやって来て、確かに夏が終わろうと
していた。
秋はどんな時も何故か、もの悲しく、人恋しい。
「櫂、今日お泊まりしない?」
バイト中にルミが声を潜めて聞いてきた。
「……ん?なんかあった?」
「ううん、何にもないけど…人肌が恋しくて
誰かと一緒に寝たいの」
ルミも一緒か、、なんて思いながら
いいよ、と答えた。
きっとルミは本当にただ1人で寝たくないだけ
俺と同じ気持ちなんだろう…と 思ったから。
1人でベッドに入っても眠れない。
秋の夜長だ。
ルミと一緒だったら、眠れなくてもきっと
居心地はいい。
バイトが先に終わった俺は更衣室で着替えて
ルミが終るのを待っていた。
時間潰しに携帯のゲームを始めて、直ぐに
携帯が震え出し着信を告げた。
誰だろう、と画面を凝視すると
(蒼佑) と表示されて、控え室の片隅にある
椅子から飛び上がるように立ち上がった。
ー え!?、、、何で?
何かの間違いかと、何度も画面の文字を目で
なぞった。
震える手で受話をスライドして、耳に携帯を
あてる。
(もしもし…?)
「………?」
(もしもし?えっと……新田 櫂君?)
「……は、い」
知らない声が聞こえてきて、耳に神経が集中する。
ー 蒼佑じゃない…誰?
蒼佑の携帯から、蒼佑じゃない別の男性が
俺に電話してくるなんて…。
(…えっと、俺、そうちゃ……白井君の友達で
あ、こんな時間にゴメンね?白井君、今体調
崩してて……)
「…え!?」
(お節介だと思ったんだけど、ちょっと話したい
事があって…できれば近いうちに会いたいと
思うんだけど…
いつなら都合いいかな…?)
「体調って?蒼佑どうしたんですか!?」
(ちょっと食べられなくなっちゃって…
詳しい話しは会ったときに……)
「今から大丈夫です!」
(え、今…? ん~電車は…ギリ動いてるか…
まぁ…俺はいいけど…そこまで急ぎじゃなくて
いいよ?電車なくなっちゃうし)
「気になって眠れません!」
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