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21. 3
通話を切るのと、ほぼ同時にルミが
控え室に入って来た。
「ゴメン、ゴメンお待たせ~」
「ルミ!ごめん!今日ダメになった!」
「えぇ~~~ っ」
ルミが不満げな顔で声をあげる。
「蒼佑が体調悪いんだって!」
「………!? 蒼佑から連絡あったの?」
「蒼佑じゃなかったんだけど、蒼佑の携帯から!」
「なにそれ?どうゆうこと?」
「とりあえず、また連絡するよ!
ゴメンねルミ!」
あ、ちょっとっ!と、ひき止めるルミに、ろくに
返事もしないまま、バタバタ部屋を飛び出した。
駆け足で駅へ向かう。
待ち合わせに指定された駅は都外だった。
とはいえ、電車で20分程度。
確かに、帰る頃はもう終電に間に合わないだろう。
でもそんな事は大した問題じゃない。
後で考えればいい。
少しの不安は、電話してきた蒼佑の“友達”だ
蒼佑の目を盗んで蒼佑の携帯から連絡してこれる。
それだけ親しい間柄。
(奥田 進です)
最後に自分の携帯番号と自分の名前を名乗った。
あの日、蒼佑の家にいた…。
たしか再会してから蒼佑が、進、と呼んでいた
気がする。
ー あの、すすむ?
訳がわからない事だらけでも
どうでもいい。
とにかく蒼佑がどんな状況なのか
確認するまで落ち着かない。
辛いときに支えるのは自分でありたいと思った。
罵られても、二度と会えなくなってもいいんだ。
絶対に蒼佑の居場所を聞き出して、今度は
自分がその役目を果たしたい。
事情は分からなくても、込み合う電車の中で
暗い窓の外と、ガラスに映る自分を見つめながら
強く強く、心が揺らがないように繰り返した。
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