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21. 4
比較的郊外の駅で待ち合わせた。
駅前には何軒かの大手チェーンのファミレスや
丼屋があるけれど、一本裏通りに入れば静な
住宅街だ。
それでも降車する乗客の人数は少なくなかった。
俺は言われた通り、改札を出て直ぐに
先ほど聞いたばかりの携帯に連絡した。
駅を出てすぐのコンビニに来るように案内され
通話状態でそちらへ向かう。
(コンビニの前に立ってる)
そう言われて、そちらを見ると20代半ばくらいの
男性がキョロキョロ辺りを見回しながら
携帯を耳にあてていた。
俺の姿を見ると
あ、見つけた、と一言。
携帯から聞こえる声と、そこに立っていた男性の
口の動きが重なって、ああ…この人か、と思った。
携帯を薄手のラフなジャケットのポケットに
しまったついでにポケットに手を突っ込む。
「はじめまして…じゃないよね?」
そう言って笑った。
きっとライバルであるはずの相手なのに
一目で好きになってしまいそうな笑顔だった。
柔らかで、人の良さが顔ににじみ出てる。
服装も、ちからの抜けたオーバーサイズの上下に
スニーカー。
七分丈の袖から出た腕が筋まで綺麗だった。
ー ああ、完全に負けだ。
この人がそばに居るなら俺なんていらない
先ほどまでの強気な自分は何処へやら………。
俺は伏し目がちにペコリと頭を下げた。
「国道沿いにあるファミレスなら24時間
やってるんだ、そこ行こう」
その人は指をさしながら歩きだした。
それに無言で頷いて後を歩く。
「そうちゃ…あー、もう そうちゃんでいいよね?
そうちゃんは急を要する状況じゃないから
心配しないで」
「……蒼佑どうしたんですか?」
ファミレスの席について、適当に注文をして
本題に入った。
「恋患いだよ」
冗談なのか、本気なのかわからない調子で
口元を隠すようにして言った。
なんだろうこれ…俺はからかわれてるんだろうか?
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