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「あの…」
「ん?」
「俺…あなたの事なんて呼べば…」
「そうちゃんは進って呼ぶよ」
「じゃぁ……進さん…」
「ハイハイ」
「俺、今冗談で笑える感じじゃないんです」
「はは、 ゴメン」
進さんは氷の入ったグラスを、ストローで
かき回し、涼しげな音を響かせる。
「でも、そんなに冗談でもないよ」
「……?」
「俺とヨリを戻したくて、それが叶わないから
情緒不安定なの」
ー はい? 何のアピール?
「…って、言ったら信じる?」
ー またふざけてる……
「進さん、さっきも言いましたよね?俺は今
冗談に笑えるほど、リラックスしてないです」
「あ、そっか」
人懐っこい笑顔は、本心が全く見えてこない。
「櫂君って20だっけ?」
「はい」
「……いいなぁ、若くて…俺と10歳以上違う…
やっぱり肌に張りがあるよねぇ…」
「え…!?」
ー 30過ぎ? 全然見えない!!
「綺麗な顔してるし……そうちゃんも
そりゃメロメロになるよね…」
頬杖をついて真顔で俺を眺める。
ー また、からかってる…
そうか、この落ち着きは年齢のせいか、良かった?
20代前半~半ばに見えたから、自分とそれほど
変わらないのに、完全にてのひらで転がされてると
思ったらショックで、自信を失う所だった!
「冗談はもういいんで、本当にどうしたのか…
どうして わざわざ俺に連絡してきたのか
ちゃんと教えて下さい」
「一月くらい前かな?
そうちゃんに会ったでしょ?」
「………はい」
「その話し…だいたい聞いた。
というか、そうちゃんが高校教師をやめた理由も
……君は気分悪いだろうけど、全部知ってる」
進さんから笑顔が消えて、視線も飲み物の残った
グラスに落ちた。
「そうちゃん高校辞めてしばらく荒れてたの
一日中部屋でダラダラして、昼も夜も
めちゃくちゃで…もともとセフレはいたけど
そっちの付き合いも酷くなって…貯金食い潰して
生きて…。
このままじゃ変な薬にも手を出しそうで、
見てられなくて…俺が一緒に住もうって誘って
落ち着くまで一緒に暮らしてた」
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