121 / 150

21. 8

「そりゃ、そうよ俺だってそうちゃんが 好きだったんだから」 サラッと答えられてドキッとした。 俺の動揺に気づいたように、進さんはニヤッと 意地悪く笑う。 「一緒に住んでた時は、一応恋人だったしね 君なんかより よく知ってるよ。 そうちゃんの良いところもダメなところも」 返す言葉もない…。 まったくそのとおりだろう…。 「それなのに、君に勝てなかった そうちゃんは君を忘れなかった…。 いつまでも君の思い出と戦うのに疲れて 俺から別れようって言ったんだ。 取り乱して、ひき止めてくれるかなって ちょっと期待してたのに、あっさり円満に 別れちゃったよ」 「進さん…」 「でも、俺は、やりきったって思ったから 別れようって思えたんだよ。だから今も 友達として未練もなく、そうちゃんを支えられる。 だから櫂君もそうしなきゃダメだよ。 俺なんかより絶対自分の方が彼を知ってるって 言えるくらい、ぶつかって、しがみついて… 離れるのはそれからじゃない? 俺から言わせると君らは始まってもいないよ」 頬をひっぱたかれたように、キツイ言葉だった。 でも、スッキリしたような…。 霧が晴れたような…。 「で、その気持ちは君にあるのかなって確認」 「あります!」 即答できた。 進さんがふにゃっと優しく笑った。 「よし! じゃぁ行こう」

ともだちにシェアしよう!