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22. 光を繋いで

ファミレスの外に出ると、入る前よりも 湿度が高くなった気がした。 秋らしくない、もわっとまとわりついてくる ような空気。 「雨降るのかなぁ…」 真っ暗な空を見上げて、俺が思ったことを 進さんが呟いた。 俺は頷いて、そうですね、と答えた。 「そうちゃんち、ここから10分もかからないから 大丈夫」 「……ホントに行くんですか? こんな深夜に」 今日、蒼佑は仕事を休んで寝ているらしい。 日中にも、1度様子を見に行っていて 夜また来る、と伝え、そしたら鍵を渡された というのだ。 俺はそれをザワザワした気持ちで聞いた。 「え、なんか疑ってる? 本当に今日渡されただけだよ? ずっと合鍵持ち歩いてる訳じゃないからね?」 「……あ、ダイジョブです……」 「え?大丈夫ってどっちの意味? 若い子何でも大丈夫ってゆうから分かんない!」 必死で取り繕う姿が、年上なのに愛らしい。 俺と身長は大して変わらないか、俺の方が少し大きい くらいだ。全体的にスレンダーに見えるし俺たちの 体格はとても似ている。 でも、進さんはつくべき所にしっかり筋肉があって 均整のとれた綺麗な身体だと思った。 俺のように、ただ華奢なタイプとは違う。 「進さんどうやって帰るの? 終電行っちゃったでしょ?」 「タクシー呼ぶよ。俺は都内だけど、 距離的にはそんなに離れてないから」 「俺も蒼佑に追い出されたらタクシーだ」 「……大丈夫だよ。 どうしてもダメだったら連絡して」 「……はい」 それからしばらく黙って歩いた。 ずっと心臓がトクトク鳴って、手に汗が滲む。 進さんが来ると思ってる蒼佑。 俺が突然 部屋に現れたらどれ程 驚くだろう。 怒るかな…怒るよな……。 それでも今行かなかったら、きっと死ぬほど 後悔するだろう。 二人のこれから…それはどうなるか分からないけど まず今は蒼佑の体調だ。 進さんの代わりにはなれないだろうけど 俺ができる事が有るなら何でもやってあげたいのだ。 今度こそ…。

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