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蒼佑は俺と戦うほどの気力もない、と 言うように、膝の上で組んだ腕に突っ伏して ため息をついた。 「…俺……やっぱり蒼佑が好きなんだ」 決死の覚悟で言った言葉も 蒼佑には響かない。 突っ伏したまま動かず、俺は次の言葉を探した。 「……進さんがね、俺たちはまだ何も始まって ないって…」 「………」 「蒼佑は………俺と別れて、辛くて 体調崩したってっ………」 「………だったら?」 「……え?」 低く冷ややかな声で返されて、喉がひっつく。 蒼佑がゆっくり顔を上げて俺を見た。 「櫂と別れたのが辛くて体調崩したとして どうしたら良くなると思ってるの? 一緒にいたら治るとでも言いたいの? 俺、高校教師やってた時だって おかしくなりそうだったよ。 お前が同級生や、上級生にちょっかい出して 俺に見せつけてた時だって、本当は直ぐ 引き剥がして、ぶん殴りたかったよ。 理性を保つために、何度も目をそらして 自分の中で見なかった事にした…」 「蒼佑…あの時は…」 ー あの時は子供だった 蒼佑の気持ちを確認したくて… 「教師やめた後だって、しばらく荒れてたって 言っただろ? でも、時間が解決してくれた。 会わないでいればすぐに忘れられるさ 普通に結婚して、家庭をもったら…」 「婚活なんてウソなんでしょ?」 「…は?」 「進さんが教えてくれた」 「……お前らどんだけ仲良しになったんだよ?」 蒼佑はあきれたように笑った。 「………まぁ、“してる”ってのはウソだよ でもいずれ、本当にするよ」 「ダメ…」 「はい?」 「………結婚なんてしないでっ 病んじゃうくらい……好きでいてよっ……」 ー 言ってしまった……! 蒼佑の事を考えたら言ってはいけないだろう ひとこと。 何が正解で何が不正解か そんな事忘れて ただ自分の心に正直に 蒼佑の未来を奪っても それでも 今度はちゃんと大切にするから …… やり直すチャンスを…!

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