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22. 6
永遠と思えるような長い沈黙。
本当は1分足らずの時間。
俺は猫のケンカのように、じっと蒼佑の目を
にらみ続けた。
反らしたら負けだ。
蒼佑はため息混じりにほんの少し笑った。
「… 俺も櫂が好きだよ」
「蒼佑…」
「でも、櫂の事が好きな “自分” の事は
好きじゃないんだ」
目の前が真っ暗になった。
ハンマーで殴られたような衝撃。
「…… 櫂の事を思って、何してるか気になって
小さな事でイライラしたり、別れて食欲まで
無くなるような自分が本当に嫌なんだ」
「……そう…す…け」
「こんな風にお前を傷つける自分も……
一緒にいたらお互いボロボロになっちゃうよ
出会った事を後悔したくないんだ」
言って、今度はゆっくり立ち上がった。
壁のフックにかけられてたバックから
財布を出すと、そこからお札を出して1枚
俺の手の平に握らせた。
「これ以上俺をダメなヤツにしないでくれ」
タクシー代…、と 言ってベッドにゴロンと寝転び
俺に背を向けた。
…あぁ真っ暗。 目が回る。
何か言い返したいのに、今何か言ったら
泣きわめいて、毒を吐いてしまいそうだ。
弱りきってる蒼佑に向ける言葉じゃない。
どうしよう、どうしよう。
何もことばが見つからない。
俺を好きな自分は嫌い?
もう、ややこしくて何も言い返せない…。
誰か教えて、何て言えばいいの?
……愛ってナンダ???
完全に迷子だ。
「来てくれてありがとう…もう大丈夫だから…」
小さな声で蒼佑が呟いた。
俺は言葉を選べず、とりあえず部屋を煌々と照らす
眩しい蛍光灯を消した。
蒼佑が眠れないと思ったから。
「……進さんがね、果物と飲み物を
買っといてくれたの…朝……食べられそうなら
食べてね…」
「………ん、分かった」
「…じゃ……帰る…」
帰る…。
逃げるように帰る。
数時間前までは自分が蒼佑を元気にさせられると
信じていたのに。
立ち上がって
もう一度蒼佑の顔を見る。
こちらに背を向けて
俺をシャットアウトして目を閉じた横顔。
意地でもこちらを見ないつもりだろう。
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