131 / 150
23. 3
(そろそろ落ち着いた?)
進さんから連絡が来たのは2週間ほど
経ったころだった。
「まあ……落ち着いたと言えば…」
(元気無いな~
約束どおり奢るからさ!
なに食べたい?)
「なんでも…」
(……なんか本当に覇気が無いけど大丈夫?
今度はそっちが体調崩すとかやめてよ?)
「……大丈夫です」
(……そうちゃんはね…ちょっと元気出てきたよ)
「……え?」
(君が来て、俺に激ギレして、すぐ食べ始めて
最初は無理してるのかと思ったけど…
つづけて食べてるし、仕事も復帰して
問題なく働いてる…だから大丈夫)
「……そっか…良かった」
青白く、肉の落ちた蒼佑の顔を思い出す。
ー 元気になって良かった…
その知らせは、少しだけど
俺の心を明るくした。
(じゃあ来週末ね!店、適当に決めとくから)
進さんは、少し強引に約束して電話を切った。
俺は少しは蒼佑の助けになったんだろうか?
俺の事なんて全然関係なく、蒼佑は蒼佑の
言っていたように、時間とともに一人で気持ちの
整理をしたんだろうか?
俺は、まだだけど…。
・
・
約束の日、訪れた事の無い駅に呼び出された。
駅周辺は週末らしい人の多さで、人込みが
久しぶりな俺は、その騒がしさに、
もう、うんざりしていた。
「あ、こっちこっち」
待ち合わせ場所に先についていた進さんは
俺の姿を見て軽く手を上げた。
以前会った時と同じ、ナチュラルな力の抜けた
服装が、このギラギラした街と不似合いで
進さんがこんなところに呼び出すのが不思議に
思えた。
「イタリアンのね、美味しい店があるんだ
チーズ平気?」
「はい…魚介は得意じゃないですけど…」
「そうなんだ?そうちゃん魚介、
結構好きだよね?」
「………」
「あ、ゴメンね…。
もうアイツの話しはやめようね
共通の話題が彼だけだから、つい
口から出ちゃって…」
「気にしなくていいですよ。
そっか…蒼佑 魚介好きだったんだって…
俺たち外で食事したこと、ほとんど無かったから
そういう話題にならなかったんだなって…」
ともだちにシェアしよう!