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24. 今日はもう…
「さてと…そろそろ次行こうか…」
携帯をチラリと見て、進さんが言った。
「次?」
「うん、面白いところ連れてってあげる」
「…俺、結構飲んじゃったし…
もう帰ろうかと…」
「いいから、いいから!酔っぱらってるくらいが
ちょうどいい所だよ」
進さんが意味深に笑った。
店の外に出たら、黒光りした国産の高級ワゴンが
停まっていた。
「あ、いたいた」
進さんは何のためらいもなくその車のドアを開け、
戸惑う俺を押し込むように、車の後部座席に
乗り込んだ。
「お待たせ」
「…その子?」
「うん、可愛いでしょ?」
「…ふう~ん。大丈夫かよ
本当に20過ぎ?」
「……本当だって、ね?櫂くん
本当にハタチ過ぎだよね?」
運転席にはものすごく整った顔の、男性が
乗っていた。
ほとんどこちらを向かず、バックミラーで
チラリと俺を見る。
全身黒っぽいスーツをキレイに着こなして
色気駄々漏れの、俺の回りにはいないタイプの
男性だった。
「…あの、、誰?」
「ああ、彼はね、けんちゃん。
昔からの友達。そうちゃんと共通のね。
ちょっと怪しそうだけどいい人だから
心配いらないよ」
「あやしそう、は余計だ!」
「ふふ、そう?ごめん」
進さんの知り合いなら…危険な事はないと
思うけど…。いったいどこに連れてかれるんだ…。
不安でソワソワ落ち着かない俺を無視して
二人は親しげに言葉を交わして
車は静かに走り始めた。
「俺免許持ってないし、飲んじゃってるしさ
さっきの店からだと、歩くとちょっと距離ある
から送迎頼んだんだ」
「…そ、う…なんですヵ?」
ー そうまでして、次行かなくても…
車は住宅街と商業地の間のような
地域に入り込んでいく。
雑居ビルやマンションが並び
先程の街の喧騒は落ち着き、人もまばらで
遅い時間にやっている店は目に見えて減った。
「こんな所に店あるんですか?」
「店って言うか、レンタルハウス
けんちゃんバーを何軒か持っててね
これから行く所もけんちゃんの持ち物。
で、1、2ヶ月に1回、不定期で開かれる
パーティーにこれから行くの」
「パーティー…?」
ー 何だろう…嫌な予感しかしない…
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