135 / 150

24. 3

「ほら、行くぞ…」 ー え、命令口調? 初対面なのに? 「あ、あの…俺っ…なんて呼んだら?」 「ケンでいいけど?」 「け、ケンさん、、、俺パーティーとか、 苦手っていうか…」 ケンさんは、長い足でスタスタ勝手に歩きだす。 「知らねーよ いいからとりあえず中入るぞ」 二人は、何が何でもこのパーティーに 俺を連れてく気らしい。 進さんの考えてることが分からなくなった。 さっきまでは凄く気が合いそうだと思ってたのに こんな強引な事をする人だと思わなかった。 門には、会員であるかの確認をする為か 体格のいい男が立っていて、ケンさんに 気づくと、あ、どうも、と頭を下げた。 ケンさんも軽く視線だけ送って、足を止める事なく 中へ入って行く。 小さな噴水のある庭を、ケンさんに置いて かれないように、俺は小走りで後を追った。 大きなドアの前で、ケンさんが 不意に振り返り ほら、と手を出した。 「……?」 「手、出せ」 言われるまま手を出すと、ケンさんがその手を 握って、グッと俺を引っ張る。 「あ、あの…!?」 「こっから先は、俺の男だと思われてた方が トラブらないと思うぞ」 俺の手をキュっと握って、恋人繋ぎに指を 絡ませると、口の端だけ上げて笑う。 パーツのはっきりした顔は、至近距離で見ても 綺麗で、心臓がバクバクと踊り出した。 それにしても… 俺はニットのパーカーに ジョガーパンツ…。 オーダーのスーツをビシッと着こなした ケンさんには、どう見ても不釣り合いだ。 「俺、こんな格好で…平気ですか?」 「別にドレスコードは無いし、服は色々だよ」 「……というか…ケンさんと合ってないなって…」 「ップ…それこそ色々だから平気 俺は雑食だから」 ー 雑食!? ………コワッ…! 開かれた重い扉の向こうには、思った以上の 人数が集まって騒ぎ、ケンさんの言ってたとおり カジュアルからフォーマルまで、皆、思い思いの 格好をしていた。 薄暗い通路も、バーカウンターのある開かれた リビングも、むせかえるような雄の匂いと 南国の空港のような甘い芳香が混ざりあって 長く居たらここが日本だということを忘れそうだ。 人目を憚る事なく男同士で体を寄せあって キスを交わしたり、どこからか聞こえてくる 喘ぎ声を掻き消そうとするような、大音量の トランス。 ケンさんと一緒にいるせいか、チラチラと 皆がこちらを見ているような気がして 俺はどこに目をやったらいいのか分からず 思わずケンさんの肩に隠れるように身を寄せた。

ともだちにシェアしよう!