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24. 4
「まわり、気になる?」
ソワソワ落ち着かない俺を面白がるように
ケンさんが笑う。
「…まぁ、、正直……」
「上に個室あるけどそっち行きたい?
そっちだったらゆっくり飲めるけど
男漁りもできないな」
「もともと漁るつもりないです!」
俺は勝手に連れてこられたんだ。
…まぁ興味がなかったというと、ウソになるけど。
「ふうーん…蒼佑のこと
ふっ切りたくないの?」
突然その名前を出され、それまでとは違った緊張で
体が強張った。
「…そんな事…考えてない…」
忘れようとして忘れられる訳ない。
無理して誰か別の人を好きになろうとも思わない。
「ケンさん久しぶりですね」
突然 背後から声をかけられ、振り返ると
髪をシルバーに染めた、見るからにヤバそうな
ピアスだらけの男がニヤニヤとこちらを見て
立っていた。
「ああ、彼のデビューにお付き合い」
ケンさんはニコリともせずに、チラリと俺に
視線だけおくって答えた。
「へぇ~…
え? 誘ったら怒られちゃう感じですか?」
ー は?何だって? 誘うって誰を?
「……さぁ?…どうする? ナンパされてるけど
遊んでくる?」
真顔で聞かれて、俺はゾッとして
小さく首を振って応えた。
ー 遊ぶって? 遊ぶってナンだ!?
「だってさ。残念でした。
他行って遊んでこい」
ケンさんが、ピアスの男の肩を叩いて追い払う。
「残念。彼、気が向いたら 声かけてね」
男は、ふらっと現れた時と同じようにニヤニヤ
したまま、素直にその場を立ち去った。
「見慣れない奴が俺にくっついて現れたから
ちょっと見に来ただけだよ
気にすんな」
「……ケンさん…やっぱ無理…帰りたい」
「……じゃ、上行く?」
「個室…? 」
「そ、ベッドのある個室」
「!?」
「どうせ蒼佑以外と寝たことないんだろ?」
「あ、あります…!」
「へぇ…それはちゃんと恋愛対象の相手?
無理やりされたとか、援交とかじゃなく?」
俺は心を見透かされたのかと驚いて
声も出なかった。
カウンターの上で握ったグラスがコトコト音を
鳴らして俺の手の震えを伝える。
ケンさんがそれに気づいて、そっと俺の手から
グラスを取り上げて、すぐ横にコトリと置いた。
その時ピクッとケンさんが動き
内ポケットから携帯を出して、何か確認すると
フッと笑った。
「……あとちょっと…かな…」
聞こえるか聞こえないかの、小さな声で呟いて
またポケットに携帯をしまう。
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