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「案外さ、一回 他の奴とやっちゃえば あっさりアイツの事なんて忘れちゃうんじゃ ないの?」 ケンさんはカウンターに肘をついて 俺の顔を覗きこむ。 「今は意地になってるだけでさ …ほら、見てみろよ。 自分は孤独だ、なんて思ってたかもしれないけど その気になって探せば、こんなにゲイって いるんだぜ? 蒼佑なんかより おまえを大切にしてくれる ヤツだって必ず居る」 つられて回りを見ると、日々悩ましいことなんて 無いように、皆 陽気で解放感に満ちている。 ここに蒼佑がいたら、俺も同じように この空気を楽しんでるんだろうか? 見せつけるようにキスなんかねだって パンツの中に、手なんて突っ込んで…。 “そんな目で見られても、萎えるだけだよ” 「……!」 蒼佑は、俺をこんな所に連れてこない。 連れがいるのに平気でナンパしてくる奴が ゴロゴロ居る場所。 「……俺、帰ります…」 「…話し聞いてた?」 「ちゃんと聞いてましたよ…。 でも…今はそんな気分じゃないっていうか…。 蒼佑がどんなにダメなヤツでも だからって嫌いになんてなれない… どれだけ優しくされても、どれだけ見た目が 良くても… きっと蒼佑より好きになったりできない…」 「そんなに自信があるなら試してみろって」 ケンさんはゆっくり立ち上がると、俺の肘の上を グッと掴んで強く引っ張った。 そのままグングン引っ張られて吹き抜けのリビングの 奥にある階段に連れて行かれる。 「ちょっ…やめっ!」 帰ります、と腕を振り払おうとした時 反対の腕をグッと引かれて体がよろめいた。 「…コラ、何してんだ」 「…!?」 そこには息を切らした蒼佑の姿があった。 「な、なな……っ何で??!」 驚いてパニクる俺を通り越して 蒼佑の目はケンさんを睨み付けていた。

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