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ー え、え……ええ? 俺は嬉しさで、膝がガクガク震え出した。 どういうつもりか分からないけど 蒼佑が、俺を渡さないと言ってくれた気がして。 見るとケンさんがニンマリと笑っていて その顔は今までの、俺たちをバカにするような 笑い方とは明らかに違っていた。 「……じゃ、路駐してるんで、帰ります」 蒼佑は軽く会釈すると、おれの腕を引っ張ったまま 外へ向かった。 振り返るとケンさんは可笑しそうに笑っていて 何人かの客に囲まれ、からかわれ、追ってくる 様子もなかった。 ー 何だったんだ? 急な展開に気持ちがついていけない。 外に出ると門のすぐ横に車が停められていて 戸惑う俺を、蒼佑がグイグイ助手席に押し込んだ。 蒼佑は運転席に乗ろうとドアを開け、一瞬何か考え 「ちょっと待ってて… 降りるなよ?」 語尾強めに言って、どこかに歩いていってしまう。 車の中からバックミラーで蒼佑の背中を目で追うと 駐車場の中へ入って行くのが見えた。 訳が分からず、ソワソワ待っていると すぐに蒼佑は戻ってきて、何も言わず車を 発進させた。 「………進さん…いた? 話した?」 「………」 「何も言わないで、こっち来ちゃったけど… 大丈夫かな…俺の事 待ってないかな? 電話しとこうかな…」 俺が一人言のようにつぶやいて、ゴソゴソ バックを漁り始めると、やっと蒼佑は片手で それを止めた。 「しなくていい、俺が連れてくって言っといた」 「…? 俺が進さんと来たの知ってたの?」 「……ああ」 「蒼佑…何で来たの? っていうか、俺たちより 前からあそこにいたの?」 「………」 蒼佑は窓に肘をつくようにして、指先で唇を 触って、何か考えるように黙ってしまった。 ー 怒ってる…? のかな? 車の中は重苦しい沈黙。 蒼佑にしつこく言い寄っておきながら ケンさんと、あんな場所にいるなんて…。 もう何を言っても信じてもらえないだろう。 蒼佑が最も嫌う事をしてしまった…。

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