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一人、悶々と、何て言えば蒼佑が許して
くれるだろうかと考える。
進さんには悪いけど、全部進さんのせいにして
俺は無理やり連れてかれたと言うしかない。
聞かれたらそう答えよう。
それほどウソも言ってないし…。
売り言葉に買い言葉で、最悪の事態を
招いてしまわないように。
今回は、何を言われても全部謝り倒そう!
そうしたら…もしかしたら道が見えてくる
かも知れない…。
だって、蒼佑はケンさんから、俺を連れ去って
くれたんだから…望みはある!!
キッと音をたてて、蒼佑がサイドブレーキを
踏み込んだ。
ー ……??
住宅街のど真ん中にある、小さな公園の前に
車は停められた。
辺りは街灯もまばらで、人気もなく静けさに
包まれている。
蒼佑がシートベルトをはずしたので、自販機でも
寄るのかな?そんな事を思って辺りを見回すと
突然 運転席から、蒼佑が腕を回して
優しく、柔らかく俺を抱きしめた。
身体中に暖かい血液が一気に巡り
自分の心臓の音だけが頭に響いて
息も吸えなかった。
どうしたの? と聞こうとしたけど
上手く声が出ない。
「…無事で良かった…」
「……?」
「お前に何かあったら、って思ったら
おかしくなりそうで…怖かった」
「ナニ…かっテ…?」
ー え、実はケンさんってヤバイ人なの?
でも、そんな人を 進さん、俺に紹介するかな?
まさか進さんが、めっちゃヤバイ人!?
鼻がぶつかりそうな距離で蒼佑が笑った。
「…… 進が俺に電話してきたんだよ」
「…? うん……?」
「何て言ってかけてきたと思う?」
「……わかんない…ナニ? 」
「櫂くんが変な奴らに輪姦《まわ》される!
助けて!!……って」
「………は?」
「は? だよな? 変だとは思ったんだ。
進、あそこで…乱暴されたから…トラウマで
入れないんだよ。
嘘だろ?って聞きたくて、すぐに折り返し
かけても携帯切られてるし
ケンさんがいたら助けてもらえるって思って
かけたら、完全に無視されるし…。考える
余裕もなくて、まんまと誘い出されたよ」
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