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山奥のロッジのような喫茶店は 蒼佑の家から駅に向かう、比較的人通りの多い 通りにあった。 優しそうな年配の夫婦が二人でやっている。 サラリーマンや、小さな子供を連れた若い夫婦 店の常連といった感じの老紳士。 年齢も性別もバラバラな客が店内を埋めている。 トーストに目玉焼き、ベーコンにサラダの ワンプレートのモーニングを二人で食べた。 「うっま!」 パン?バター?どっちか、どっちもか? 分からないけどトーストがめちゃくちゃ旨くて 俺は目を丸くして声をあげた。 「だよな、旨いよな!?」 俺の反応を見て、満足そうに、少し自慢げに 蒼佑が笑う。 越してきてすぐにここを利用して トーストとコーヒーの旨さに感動し、 週末は、ほぼ毎日来ていると言う。 ゆったりした暖かい空気の店の雰囲気も とても居心地がいい。 「そのカーディガン似合うね」 蒼佑がコーヒーを片手に言った。 「ホント?じゃぁ ちょうだい」 自分が来てきた上着だけでは寒くて 蒼佑が一枚貸してくれた。 淡いキャメルのカーディガン。 俺には少し大きいけど。 「いいよ。俺より似合うし」 「マジ? やったぁ」 蒼佑とこんなに穏やかで幸せな時間を 過ごせるなんて嘘みたいだ。 コーヒーを飲みながら、あくびなんかして 窓の外を少し眠そうな顔で眺める…。 そんな蒼佑を見てるだけで嬉しくて 涙が出そうになった。 「なんか、夢みたい……」 「え?」 「こんな日が来るなんて、昨日までは 思ってなかったから」 「……そうだな…ムカついたけど 進のおかげだな…」 「……進さん…スゴく素敵な人だね…」 俺の言葉に、蒼佑は少し気まずそうにうつ向いて 笑った。 「蒼佑が好きになった理由が分かるって言うか… 悔しいけど、嫌いになれなかった…」 「……そっか」 「…でも、もう二人で会わないで」 蒼佑がサラリと流してくれるように できるだけサラリと言ってみた。 内心では、気を悪くしたらどうしよう、と ドキドキしながら… 「……簡単に鍵なんて渡さないで」 「当たり前だろ」 蒼佑は思った以上にあっけらかんと 応えてくれた。

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