148 / 150
26. 6
部屋に帰って扉を閉じたら、二人の世界だ。
世界には二人しかいないみたい。
ベタベタくっつきたがる俺を無視して
蒼佑が洗濯や洗い物をはじめる。
こら、邪魔。
なんて言われても全然平気だ。
だって顔が笑ってるし。
背中にくっついて、腰に腕を巻きつけて。
「エッチしようよぉ~」
「昨日も朝もいっぱいしただろ」
「朝のはエッチじゃないじゃん…」
「ー! 櫂、そうだっ!言おうと思ってた」
「…ん?」
キッチンの水道をキュっと止めて、蒼佑が
真面目な顔で俺を見た。
「これからは、あんなバコバコ発情期のライオン
みたいにやりまくるのは、何か特別な時だけに
します!」
「………は?何ソレ」
蒼佑の腰に巻き付けていた腕をゆるめる。
「あんなやり方してたら、お前すぐ体壊すよ
付き合って、一緒にいる時間が長くなれば
…そういう事する時間も増えるだろうけど
必ずしも本番じゃなくても、俺は別に平気だし
我慢とかじゃないから
言っとかないと“ 蒼佑俺とするのあきたんだ ”
とか、言い出しそうだから先に言っとく」
「……だから朝、、手だけって?」
「そ、十分気持ち良かったろ
愉しみ方なんていくらでもある」
「まぁ…そりゃぁ……」
ー 昔からそう…触れてくれるだけでも
幸せだった
「はい、ほら」
蒼佑がこちらを向いて手を広げた
俺は よく分からないままその腕の中に収まる。
背中に回された蒼佑の腕が、ギュッと俺を
抱きしめた。
「大事にするから」
優しい声で言われたら
反論なんてできない。
胸が熱くなって目眩がした。
ー これ、本当に蒼佑なのかな?
こんなに優しくて甘くて幸せな言葉をくれる
嘘みたいで、怖くなる。
ラブホで俺をベルトで縛って無理矢理犯した
あの蒼佑と同じ人間だと思えない…。
俺の事なんていらない、と 言い捨てた、あの…。
「あんまり急に優しくしないでよ
……幸せすぎると… 怖い 」
「…… 俺も怖い …
だから一緒に大事にしよう」
俺は黙って頷いた。
大事に。
壊れる時は 一瞬だ。
「はい! おしまい!
俺は夕方から出勤なんだ」
「えええ~~~っ?」
俺の不満を全部聞き流して、蒼佑は出かける
準備まで始めた。
「そういえば、おまえさアイツ持ってっただろ」
蒼佑がソファーをポンポン叩いて俺を見た。
「アイツ居ないとしっくりこないんだ
返せよな」
「…ああ、あのぬいぐるみね!」
「そ! ……まさか ……捨てた!?」
「捨ててない!捨ててない!
うん!今度連れてくる!」
ともだちにシェアしよう!