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抱く感情5
「あの…、片岡さん?」
「…なんだ?」
「いや、その、もしかして、酔いました?」
その問いに否定したいのは山々なのだが、どうにも頭がボーッとしていけない。
最近飲んではいなかったが、決して酒に弱いわけではないはずだ。
しかし先程の彼の言葉が気がかりで、それを誤魔化すために飲み続けていたらこの有様。
返答のない俺に、雪永はわたわたと慌て出す。
「た、タクシー。タクシーで帰りましょう。え、えと…歩けますか?あ。その前にお会計…」
てんやわんやしている彼に、申し訳なく思う。
こちらから飲みに誘って、初めて一緒に飲んだその日にヘロヘロになるだなんて。
情けない。先輩としてどうなんだ自分。
それからなんとか歩いてタクシーに乗せてもらい、雪永に開いたままのドアから覗き込まれる。
「あの、ここで平気ですか?お家の場所とか…」
「君の家がいい」
「へ?」
「君の家に連れて行け」
「ええっ!?」
迷惑をかけてまくっているのは分かるし、申し訳ないとも思うが、何故だかここで彼と別れてはいけない気がした。
先程の悲しそうな笑みが頭に浮かぶ。
彼のことを、もっと知りたい。
彼のもっと、深い部分に触れたい。
漠然とそう感じる。
「だめか?」
「!」
瞠目した雪永は、しばらくその場で百面相をしていたが、
ついには折れて、コクリと頷いた。
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