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抱く感情9
いつもほわほわの髪を更にほわほわにさせて、雪永が風呂から戻ってきた。
先程とは違い眼鏡をかけていて、つい尋ねる。
「普段、眼鏡じゃないよな?」
「あ。えと、いつもはコンタクトで…」
そして笑みを浮かべていた雪永は、次には俺を見て申し訳なさそうに眉を下げる。
「すみません。着替え用意できなくて…。おれの服じゃ、片岡さん着れないだろうし…」
そう言ってションボリする雪永。
今俺は先程まで着ていた服を再度着ていた。
しかしそれに雪永が謝る必要はない。
ついつい雪永のほわほわの髪の毛に触れて、頭を撫でる。
そして安心させようと、気持ち柔らかい口調で彼に告げた。
「俺が勝手に家に押しかけてしまったせいだから、君は何も悪くない。寧ろこっちが迷惑ばかりかけて申し訳ないくらいだ」
「え。そ、そんなことありませんよ。迷惑だなんて思ってません」
ブンブン首を振る雪永に、それならよかったとフッと笑みを浮かべる。
するとそれを見た雪永は鳩が豆鉄砲でもくらったような顔をしてこちらを見上げていた。
さっき首を振ったせいで眼鏡もズレてしまっていて、面白いことになっている。
「笑った片岡さん、初めて見ました…。すごい。片岡さん、笑うんですね」
「……人を機械みたいに言うな」
「え?あ。いや。別に、そんなつもりは…」
途端慌て出す雪永の頭を再度撫でてやる。
すると彼は安心したように表情を綻ばせると、何かを思いついたように声を上げた。
「そうだ。ハーブティー飲みますっ?」
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