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抱く感情10

「お待たせしましたっ」 キッチンから出てきた雪永は、せっせとローテーブルにカップを置いた。 この前のとはまた違い、透明感のある橙色のハーブティーだ。 「これ。前のとは違うんだな」 「っ、はいっ、そうなんですよ!」 何の気なしに尋ねれば、いきなり目を輝かせ始める彼に驚く。 急にテンションを上げて、どうしたのだ。 呆気にとられる俺を置いて、彼はペラペラと語り出す。 「カモミールティーって言ってジャーマンカモミールを使ってるんですけど、青リンゴの香りによく似ているフルーティーで清々しい香りなんですよ!この香りには高いリラックス効果があるから高ぶった気分を落ち着けてくれて、ストレスや不眠解消に効果的なんです!それで…」 「あーよく分かった。なるほど、凄いんだなそのカモミールは」 「はいっ」 いきいきと頷く雪永。 その輝いた姿に汗を流す。 意外だ。 ハーブティーが好きなのは知っていたが、まさかオタクの域にまで達しているとは。 いつもとろとろ話す彼とは思えないくらい早口で捲し立てられた。 流石は俳優、滑舌の良さは人並み以上だ。 カップを持ち口に含めば、確かにいい香りが口内で広がった。 うまい、と呟けば、また雪永は嬉しそうにふにゃりと笑う。 なんだか胸のあたりが暖かくなる。

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