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抱く感情11
「あ、そうだ片岡さん」
「幸でいい」
「…え?」
急な返しにぽかんとする雪永を眺める。
この感情は、なんなのだろう。
暖かくて、心地いい。
いつまででも、その姿を見ていたい。
側にいたい。
急激に強くなっていく思いに、自分自身困惑する。
固まっていた雪永は、やがて我に帰ったようで、口をパクパクしていた。
そして照れ臭そうに顔を赤らめて、口を開く。
「あ、じゃ、じゃあ…、幸、さん…?」
へにゃりと笑って俺の名を呼ぶ彼に、
ドクンと心臓が鳴った。
その時に気づく。
あぁ、そうか…
これは…
この感情はきっと、恋と、呼ぶのだろう。
「千里…」
「!?な、なんでしょうか…」
「いや、呼んでみただけだ」
「呼んでみただけだ…!?」
忙しなく表情を変える彼に、可笑しくなってくる。
「もしよかったらだが、下の名前で読んでもいいか?」
「っ、あ、はい、その、……どう、ぞ」
両手でカップを持ち、チビチビと飲み出す千里に、
俺はフッと笑みを浮かべ、同じようにハーブティーを口に含んだ。
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