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ハーブティー

『千里』 大好きな人の声が聞こえる。 昔から変わらない、暖かくて、優しい声。 嬉しくなったおれは、相手に手を伸ばした。 するとその人はおれを抱きしめてくれる。 彼の腕の中。 おれの1番、好きな場所。 ほのかにハーブの香りがして、ついその胸に顔を埋めて擦り付いてしまう。 ずっと側にいて。 離れたりしないで。 そう言いたいのに声が出なくて、 辛くて苦しくて、涙が出そうだ。 ねぇ。もう一度名前を呼んでよ。 おれの大好きな声で、千里って、 あの頃みたいに── ……ピピピピピ 「ん、ぅ…?」 遠くからの音で、目が覚めた。 半分寝ぼけた状態で音の発信源に目を向けると、どうやら携帯が鳴っている模様。 幸さんがおれの家に泊まってから早一週間。 朝には慌ただしく帰ってしまい、我に帰った頃には1人きりになっていた。 驚きだよなぁ。 まさか、自分の家にあの片岡幸さんが来るだなんて。 しかもお泊まり。 隠れファンだったおれ的には心臓バクバクだった。

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