36 / 108

ライバル出現?8

周りがさらなる驚愕に瞠目する中、千里の顔を胸に押し当てて幸は広瀬に視線を向ける。 「悪いな。これから俺は千里と約束がある」 「むぐ…!?」 腕の中で千里がおかしな声を上げたが今は流した。 対面する広瀬は面白くなさそうに顔をしかめる。 「…約束ってなんすか」 「それをお前に言う義理はない」 「っ、適当なこと言ってないですよね?本当に2人、親しいんですか?」 「下の名前で呼び合うくらいには。それに何度も家に行ったこともある」 「え」 固まる広瀬に千里はまずいと感じたのか、ぷはっと俺の胸から顔を出して弁解をし出した。 「いやっ、幸さんは…えと、ハーブを、たくさん持ってきてくれるんです…っ。だからおいしいハーブティーが飲めて、お菓子も食べて、とても、楽しいんですよ…!」 腕をブンブン振って一生懸命話す千里は愛らしいが、正直弁解になっていない。 というかこれは弁解のつもりなのか? 寧ろさらに広瀬の傷口を抉っている気がするが。 そんなことを思いながらも、敢えて指摘はせず、千里の肩に腕を回す。 「じゃあ千里、行くぞ」 「へ?あ、えと…?」 混乱する千里に構わずに歩き出す。 周囲はそんな一連の光景を、まるで信じられないものを見るように呆然と眺めていた。

ともだちにシェアしよう!