37 / 108
ライバル出現?9
「なんだよあのおっさん!雪永さんにベタベタしてさぁ!」
そう言ってキーキー喚き立てる広瀬に、偶々一緒にいた樹は苦笑いを浮かべた。
なんでドラマ外でも三角関係が出来上がってるんだよ。
雪永くんは上手く受け流せるような子じゃなさそうだしなぁ。
というか気づきもしなさそう。
…ってか、幸がおっさんなら1個上の俺もおっさんじゃね?
「ちょっと顔がいいからって!雪永さんはあの人に誑かされてるんです!ポワポワしてるところを付け入られてるんです!」
「ちょっとっていうか、めちゃめちゃ美形だけどなー」
ハハハと薄っぺらい笑みを浮かべて自販機で缶コーヒーを買う。
ポワポワしてるとこに付け入られるって、初めて聞いたな。
普通付け入るのは弱みとか隙とかじゃないかい?
そうしてプンスカ怒っている広瀬くんの姿は年相応のもので、随分と子供っぽく見える。
こういうの見せられると、やっぱ自分はおっさんなのかと自覚させられるものだ。
そう1人で勝手に落ち込んでいると、
不意に広瀬くんの携帯が鳴った。
未だ怒ったまま連絡先を確認した彼は、途端にその目を輝かせる。
あ、きっと雪永くんからだな。
この子ってめちゃ分かりやすー。
メッセージは、どうやらいきなり帰ったことへの謝罪のようだった。
雪永くんはこういうところはちゃんとしている。
「まったく、先が思いやられるねぇ…」
すっかりデレデレになっている広瀬に樹は溜息をついて、今後の撮影に不安を抱くのであった。
ともだちにシェアしよう!