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ライバル出現?11
「えと、ハーブティー、飲みます?」
「…悪いな。いきなり押しかけて」
「いえいえ。でも、急にどうしたんですか?」
キッチンへ向かう彼にそう問いかけられ、少しの間を置いて口を開く。
「…千里は、広瀬のこと、どう思う」
「え?広瀬くん、ですか?」
予想外だったらしくその大きな目をパチクリさせ、千里はうーんと腕を組んだ。
「元気な人、ですよね。演技もお上手ですし。今日の掛け合いも、やりやすかったです」
「……そうか」
また胸のあたりにモヤモヤとした何かを感じ始める。
自分からこの話を持ち出したくせに、面白くない。
向こうでハーブティーを作る千里を眺める。
小さくて、ふわふわしていて、暖かい。
今更ながら、先程撮影現場で彼を抱き寄せてしまったことを思い出した。
とても華奢な体だった。
腕の中にすっぽりと収まって、ほんのり甘い香りがして…
「おまたせしました」
「っ、…あぁ、ありがとう」
我に帰ると、目の前にカップが置かれていた。
一口飲めば、じんわりと体が暖かくなる。
千里も幸せそうにハーブティーを飲んでいる。
ちょこんとカーペットの上に正座している姿は、大福のようで可愛らしい。
「あ。そうだ。お菓子持ってきますね」
彼を眺めて和んでいると、そう言って千里が起き上がろうとした。
しかし…
「わっ」
「!」
足を引っ掛けてバランスを崩す。
俺は咄嗟に手を伸ばしていた。
倒れる前に、彼を抱きとめる。
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