40 / 108
ライバル出現?12
「あ、危なかったぁ。ありがとうございます、幸さん」
お礼を言う彼に、俺は言葉を返さなかった。
先程思い出していた千里の小さな体や甘い香りに、心が揺さぶられる。
……離したく、ない。
「…あの、幸、さん…?」
「…千里」
抱き寄せると、その体がピクリと震えた。
いけないと分かっているのに、もっと触れていたいと思ってしまう。
好きだ。
俺は千里に、恋をしている。
そう自覚してから、この想いが止められない。
だから……
「ごめんなさい…っ」
「!」
グッと胸を押され、体が離れた。
一瞬何が起きたのか分からず、少し経って彼に拒絶されたのだと気づく。
俺を押す千里の腕は震えていた。
怖がらせてしまったのだろうか。
咄嗟に謝ろうとした俺の前に、彼が小さく呟く。
「おれは、汚れているので…」
「……ぇ」
あまりに弱々しい声でそう告げた彼は、
いつもの笑顔からは想像できないような、
辛そうな顔をしていた。
ともだちにシェアしよう!