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災い
「おー!似合ってますよ雪永さん!」
「そ、そうかな…?」
「似合ってる似合ってる。ヒヨコみたいで可愛いぞ」
「ヒヨコ?」
ドラマの話上髪を切ることになった千里は、少し長めだった髪をさっぱりさせていた。
相変わらずふわふわ感は健在で、間瀬の言う通りヒヨコみたいになっている。
当の本人はその感想の意味が分からずに目をパチクリさせていたが、次には目を輝かせて「がんばったら鶏になれますかねっ?」とよく分からない考えを展開させていた。
この5日間、俺は千里の家に行けずにいる。
あの時の言葉の意味は、未だに分からないままだ。
あれから彼は何事もなかったようにいつも通りで、すっかり尋ねるタイミングを逃してしまっていた。
何故彼は、あんなことを言ったのだろう。
それに体を震わせ、辛そうな顔をしていた。
また1つ、千里の知らない部分に触れた気がする。
無性に心がざわついた。
このまま、あの言葉をなかったことにしていいのだろうか。
……いや。いいはずがない。
「千里」
「!」
いつものように隅っこでうとうとしていた千里に声をかける。
時刻は20時。
撮影は終わり、周りは解散の準備を始めていた。
きょとんとしている千里と目を合わし、少し躊躇いながらも口を開く。
「この後、予定あるか?」
「へ?…いや、特にないです」
「なら。少し、付き合ってくれないか」
「?」
「中華料理が食べたいんだ。美味い店を知ってる」
「はぁ…」
いきなりの申し出に千里は首を傾げていたが、やがて小さく頷いた。
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