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災い3
相変わらず忙しない姿にやれやれと呆れていると、正面に座る千里がクスっと笑う。
「楽しい人ですね」
「まぁあいつは元気が取り柄だからな」
「こんな顔馴染みのお店があるなんて凄いです。おれなんてまだ都会にも慣れてなくて」
そこで思い至って彼の出身地を聞くと、福島だと答えられた。
冬になるとよく学校でスキーをやっていたと、楽しそうに話される。
その綺麗な白い肌は雪国育ち故なのかと、ふと思った。
そうこうしていると料理が運ばれてきた。
ここに来ると、俺は決まって麻婆豆腐と春巻きのセットを食べる。
俺は辛い食べ物が好きなので、ここのピリッとした麻婆豆腐が好物なのだ。
「わぁ、おいしそうですねっ」
そう言って目を輝かせる千里は、早速箸とレンゲを手に取り小籠包を食べ出した。
箸で少し皮を破り、出てきた肉汁を吸う。
そして小籠包を口に入れ、ハフハフしながら咀嚼する。
次には「んー!」と感嘆の声を上げて両手でギュッと頬を挟んだ。
「おいしいです!今までで1番かもです!」
「そうか。それは理玖が喜ぶな」
「りく?」
「厨房のやつだよ。ここの店長」
「俺がなんだって?」
その声に顔を向けると、厨房にいたはずの理玖が目の前に立っていた。
周りを見てみると、大分人が落ち着いたようだ。
この店は緩い雰囲気で、普通に理玖は客と談笑をしたりもする。
近くから椅子を引き寄せ座った理玖は、千里を見るなり「おぉっ」と声を上げた。
「ほんとに雪永千里くんだ。さっき光也が興奮しながら教えにきたんだよ」
いやぁ、こんなべっぴんさんがウチに来てくれるなんて参ったなぁ〜。
そう言ってデレデレし出す理玖に肘鉄を喰らわせると、変態オヤジのような笑い声が引きつったものに変わった。
「なんだよ幸…。やけにガード固いなぁ」
「気にするな。お前の話し方が変態臭かったからついだ」
「ついで肘鉄はしないだろ!」
すました様子で茶をすすると、隣からツッコミが入る。
そんな光景に千里は可笑しそうにクスクスと笑った。
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