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すれ違い3

目の前で止まった太陽くんは、目をキラキラと輝かせてグイッとおれに何かを差し出してくる。 見れば庭から取ってきただろうお花が握られていた。 「わぁ、きれいだね」 「これ、千里にやる!」 「へ?」 おれに?ときょとんとした千里だったが、何かの遊びかと思いすぐに笑顔を浮かべた。 「ありがとう。太陽くんは優しいね」 そう言って頭を撫でてあげると、彼は満面の笑みを浮かべる。 「オレは頼れる男だぞ!千里!」 「ん?えと、うん、そうだね?」 「だからオレのお嫁さんになって!」 「…あ、はは。何度も言うけど、おれ、男…」 「知ってるよ!前いっしょに風呂入ったもん!」 確かに3ヶ月ほど前にお守り役を任された時に入った。 でもその前にも自分は男だって教えてたはず…。 え。信じてくれてなかったのかな…? そこまでの考えを紛らわすように、「おほん!」と咳払いをして話を続ける。 「そう。男だからおれ、お嫁さんにはなれないんだ」 「なんで?オレ父さんには応援されたよ!『愛に性別は関係ない』って!」 「……」 あの人は自分の子供に何を教えているんだ。 恭弥さん!と今から何か物申したくなるが、それをグッと堪えて苦笑いでやり過ごしていた。 「お〜い千里〜」 「!」 丁度そのタイミングで恭弥さんが姿を現した。 千里は我慢できず、プンプンと頬を膨らます。 「ひどいです恭弥さん!何も太陽くんを辛い道に導くことないです!いろいろ人生苦労するんですよ!」 「んー。相変わらず脈絡ねーなお前の話は」 そう言って軽くスルーした恭弥は、「そんなことより」と携帯を取り出す。 「うちの子と俺とで写真とろーぜ。インスタに上げる」 「え。またですか」 「だってお前利用するといいね数チョー上がんだもん」 そう言って八重歯を覗かせ無邪気に笑う恭弥さん。 でも利用とか言ってるし、全然考えていることは無邪気じゃない。

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