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すれ違い4
「お前もインスタとかやりゃーいいのに。なんでしねーの?」
「その、機械音痴なもので…。それにこれといって何を上げたらいいかも分かりませんし」
「ふーん。うわっ、既にいいね数ヤベェ」
「ねーねー!オレにも見せてー!」
ワイワイと賑やかな親子を眺める。
こうして見ていると、家族っていいなと素直に感じられた。
そしてふと、2日前のことを思い出す。
幸さんに抱きしめられて、キスをされて…。
何故だか、幸さんのことを拒み切れない自分がいる。
もう誰にも深く関わらないと決めたくせに。
家にまで通して、
一緒にハーブティーなんて飲んで、
どんどんと、その空間が居心地よく感じてしまって…。
おれは、中途半端なんだ。
結局は1人になるのが怖くて、そのせいで他人に迷惑をかけている。
このままじゃ駄目だって、分かっているのに。
臆病な自分は、何も変わることができない。
「もー、ごめんなさいねぇ千里くん」
「っ、…あ、いえ、お構いなくっ」
かけられた声に我に返る。
やって来たのは恭弥さんの奥さんだ。
どういう接点があったのか不思議なほど恭弥さんとは真逆の清楚な人で、とても美人さん。
いつもおっとりしているが、斎賀家の主導権を握っているのは彼女だという噂も。
「お守りありがとうね。こっちは大丈夫だから、お肉食べに行ってきな」
「オレも千里と行くー!」
「太陽はママのお手伝い」
「えー!」
お言葉に甘えて、恭弥さんと庭へ出た。
庭にはたくさんの人がいる。
彼らの殆どは芸能人で、恭弥さんと仲のいい人たちだ。
窓から外に出れば、いくつかの視線が向けられ「お!」と声が上がった。
「やっと来たか雪永くん!待ってました!」
「ほれほれ、お肉お食べ。可愛い子にはサービスしとくよ!」
周りからかけられる声にペコペコ頭を下げて、お皿いっぱいにお肉をもらっていると、「雪永さん!」と聞き覚えのある声が耳に入る。
声の主はなんと広瀬くんだ。
まさかの恭弥さんと知り合いだったらしく、このバーベキューに参加していたみたい。
ここに来た時に彼の姿を見つけて結構びっくりした。
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