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すれ違い7
「雪永さんが望むなら、その…」
「ん?」
少し言い淀む彼に首を傾げると、広瀬くんは口を尖らせて少しぶっきら棒に言う。
「あの人と…、片岡さんと、幸せになってもらいたい…」
「…へ?」
「だって雪永さん。あの人のこと好きなんでしょ?」
「えぇ!?」
突然何を言い出すのか。
おれは顔を真っ赤にさせて仰天する。
そんな、そんな風に見られているのか…っ。
おれが、幸さんのこと…?
「いや、でも、それは、なんというか…っ」
「落ち着いてください。壊れた人形みたくなってますよ」
「ででででも…っっ!」
「違いました?でもなんか、2人の空気感って周りとはどこか違う気がしますし。まぁ!俺的にはムカつきますけどね!」
そう吐き捨てるようにいって「はっはっはっ」と笑う広瀬くん。
なんかもう、どう言ったらいいのか…。
「あ!それとこれからは俺のこと下で呼んでください!駿って!」
「え?あ、う、うん分かった…っ」
「やったー!」
満面の笑みで喜ぶ広瀬…じゃなくて駿くん。
この子、いつも大人っぽいけど、もしかしてこっちの子供っぽい彼が本当の姿なのかな。
それにいい子だ。
幸さんは敵意を向けてるみたいだけど、いつか打ち解けられる日がくるといいな。
「雪永〜」
「へ?」
そんな時だった。
名を呼ばれ振り返ると、そこには恭弥さんの姿。
しかしおれは、その手になっているモノを見て硬直した。
「ユキナガ!ユキナガ!」
そう言って羽をバタバタさせる、インコ。
千里はその瞬間我を忘れて絶叫した。
「わーっ!やだやだー!!」
「なっ、えぇ!?雪永さん!?」
殆どタックルをするように駿に抱きつく千里。
抱きつかれた本人は驚き目を見開いた。
恭弥はそんな千里の反応を見てゲラゲラ笑っている。
「ちょっと!これどういうことすか!?」
「あはははっ。腹イテー…!千里のやつ、鳥が大の苦手なんだよ。ウチのインコ見せると毎回こうなるんだわ」
「じゃなんで見せるんすか!」
「だって面白いだろ」
「当たり前のように言うな!」
しかし当の駿自身も、「やだやだー!」と小さな子供のように抱きついてくる千里に鼻の下を伸ばしている。
笑い声と、叫び声と。
恭弥と千里の顔馴染みである人たちは、毎回恒例のイベントに楽しそうに、または困ったように笑っているのだった。
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